|
|
2005年 10月 12日
以前、このブログで『ゴードン・スミスの日本仰天日記』という本を紹介しましたが(→こちら)、この本には明治時代の写真がたくさん掲載されています。
念のために書いておくと、この本の著者は、リチャード・ゴードン・スミス(Richard Gordon Smith 1858-1918)。イギリスのお金持ちの旅行者で、1898年(明治31年)に来日し、何度かイギリスに戻ったりしたものの、結局1907年まで日本に滞在していました。そのあいだにコツコツと書きためた日記が、本書です。(解説・翻訳は、荒俣宏) ゴードン・スミスさんは、自分でも何かと写真を撮っていますし、当時、外国人向けに売られていた写真絵葉書なんかも嬉々として購入していたようす。そのなかには、普通の日本人のキモノ姿や、芸者のキモノ姿などがたくさんあって、キモノ好きにはたまりません。。アンティーク・キモノ好きって、こういう古~い写真なんかを、もう舐めるように眺めちゃうんですよね・・・少しの発見も見逃すまい!っていう気迫で(笑)。 というわけで、明治時代のキモノ姿を見てみたいと思います~~。 ■芸者 まずは芸者。この時代の着飾った女、といえば芸者です。 本書に載っている写真で一番の美女。絵葉書かと思われます。この煙るような半円の眉! こうやって襟をたっぷりと見せる着方は、やっぱり好きです。上半身が華奢に見えて、バランスが良く見えると思うのですが。それから、お引きずりに着付けているので、おはしょりなんていう無様なものはありません。 そして、帯留めに注目! おそらく、彫金の帯留めです!(鋳金・鍛金の可能性もありますが) 明治期には、金工加工の帯留めが流行しました。明治9年に廃刀令が出され、刀剣や甲冑の需要がなくなったため、失職状態におちいった彫金師たちが作りはじめたのがきっかけ、と言われています。実際は、幕末頃の芸者たちによって、金工加工の帯留めが使われ始めていたそうですが。 彼女たちのキモノがモコッとしているのは、これはキモノを何枚か重ねて着ているから。寒いから・・・というわけではなく、平安時代の十二単でもそうですが、キモノを重ねて着るのが格式の高いキモノの着方でした。その名残から、この黒紋付の下にも、白羽二重の着物を重ねて着ていると想像されます。今でも、黒留袖は、「比翼仕立て」といって襟・袖口・袂・裾が重なっているように見える仕立て方をしますよね。 にしても、せっかく白羽二重を重ねているのに、ピンク色に着色されちゃって・・・(笑)。 ■一般女性 それにしても、おツルさんの帯の締め方、スゴイですね・・・。シワ寄り放題、ほとんど兵児帯まきつけ状態。おはしょりも、どどーんとたっぷり。衣紋も、日本髪を結っているにもかかわらず、ほとんど抜いていません。 にしても・・・、この髪型は何という形なのでしょう? 銀杏がえし? ふくら雀? ちなみに、季節は夏。キモノは、単衣もの。でも浴衣ではないし、麻でもなさそうですし・・・。木綿でしょうね、やっぱり。 虫の音を聞く、という日本の風習は、欧米人には非常に珍しかったらしく、ラフカディオ・ハーンもこれについていろいろ書いていますね。ゴードンさんも、この風流な習慣を楽しんだようす。さらに、「唄うヒキガエルを4円でどうか」と言われたそうですが、それは断ったそうです。「やつはたぶん唄わないと思った」、だって(笑)。 この写真の左側の女性の、だらーんと垂れ下がった帯! これって、ただ引っ掛けてるだけっていうか、タオルかけ状態。こんなんでよいなら帯結びもラクでしょうねぇ。 左の女の子は、矢羽のキモノに、柄のはいった布を半襟にしています。右のお姉さんは、ジミな小紋に、黒のかけ襟、笹の葉もようの布を半襟にしていますね。この黒の「かけ襟」というのは、髪の油で襟が汚れないようにするもので、江戸時代、文化・文政の頃に流行し始めたんだそうです。明治になっても、黒襟をかけていたんですねぇ。 ■子ども 娘タマの着ているキモノ、膝のあたりで縫い上げてありますね。それから、裾にたっぷりとふきがついています。「ふき」とは、着物の裾の部分に綿などが入ってぶ厚くなっている部分のこと。これが重りの役目を果たして、裾がバタバタしないんだそうです。(→ 上原半兵衛道場の「杉浦日向子のおもしろ講座」に詳しい説明が載っていました。それにしても、杉浦日向子さんがもうこの世にいないなんて、、江戸好きとしてはたまらなく寂しいことです・・・。) 袂に染めもようが入った、長羽織。昔は、丈の長い羽織がオシャレだったそうですが、ホントに長いですよねぇ~。子どもだからよけいなのかしら? ほとんどくるぶしまでありそう。 子どものキモノだというのに、ジミ~な柄。(色はわかりませんが、きっとジミな色だと思われます) 大人になっても着られるようにしているんでしょうけど、でも明治時代のキモノというのは、一般的にジミな色・柄がほとんどだったそうです。 これは七五三の衣装でしょうか。振袖に、袴、胸には箱迫(はこせこ)。髪飾りの、フワフワした白い羽?がちょっと気になりますが・・・。成人式とか結婚式とか卒業式なんかに、頭に白い羽をつけた振袖の女性を見かけると、「ん~~何故?!」と頭をかしげていたのですが、この時代から羽をつけていたのですね(笑)。まぁ、子どもだから良しとしましょう。 ■ゴードンさん自身 白い木綿地に、青いミヤマガラスを描いたもの。値段は、7シリング6ペンスだそうです(どのくらいなのかわかりません)。確かに、かなり趣味が良いと思います。こういうの、私も欲しい~!!(鳥とか虫のイキモノ柄が好きです) でもゴードンさん、もうちょっと下のほう(腰骨の部分)で、帯を締めたほうがいいと思いますよー! ■着物店(古着屋) 左側にいる女性の客の、帯がまた気になります。この人も、だら~んと、タオルかけ状態。でもこのくらい大きく帯をひっかけてたら、お尻が隠れるから意外といいかも。。 最後に、いわゆる普通のお太鼓結び。 >> 以前、『ゴードン・スミスの日本仰天日記』について書いたペェジは、こちらへ。 (こちらにもキモノ画像あります。) >> 「着物イメージ・トレーニング部屋」 ひと昔前の庶民のキモノ姿や着こなしの知恵など、 力の抜けたキモノについて詳しい、犬子さんのサイト。 (キモノ好きの方ならご存知とは思いますが、改めて・・・)
by houtoumusume
| 2005-10-12 16:28
| ◆着物
|
ファン申請 |
||